農業・アグリテック分野では、温度、湿度、日射量に加え、二酸化炭素、酸素、エチレン、メタンなどのガス情報を活用する研究や環境管理が行われています。ガスクロマトグラフは、混合ガスから複数成分を分離して測定できるため、作物の生育、収穫後の鮮度、土壌・堆肥・バイオガスの評価に利用できます。
農業現場では分析性能だけでなく、電源、温湿度、粉じん、ガス供給、保守作業を含めて装置を選ぶことが重要です。
閉鎖型の植物工場や栽培室では、二酸化炭素の供給、換気、作物から発生するガスによって空気組成が変わります。複数のガス濃度を測定し、温湿度、照明、換気量、生育データと照合すると、栽培条件を検討する材料になります。
土壌や堆肥から発生するメタン、二酸化炭素、亜酸化窒素などは、微生物活動や環境負荷を調べる研究対象です。チャンバーで一定時間ガスを捕集し、GCで濃度を測る方法があります。採取面積、時間、温度、土壌水分を記録し、発生量へ換算します。
果実や野菜が発生するエチレン、香気成分、発酵・腐敗に伴う揮発性成分を測定すると、追熟や保存状態を評価する手掛かりになります。品種、収穫時期、包装、温度などの条件をそろえ、硬度や色、糖度と組み合わせて評価します。
Sylphのような小型・ポータブル型GCは、現場での即時分析や設置場所を選ばない柔軟性など、従来のラボ設置型GCにはないメリットを多く備えています。一方で導入にあたっては、重量やサイズ、バッテリー駆動の可否など、現場環境に合わせて確認しておきたいポイントも少なくありません。
こうした導入前に押さえておきたい観点を整理しているので、ぜひ参考にしてください。
| 測定対象の例 | 確認する内容の例 |
|---|---|
| エチレン | 果実・野菜の成熟、貯蔵環境、鮮度保持処理 |
| 二酸化炭素・酸素 | 栽培室の換気・施用、呼吸、CA貯蔵・MA包装 |
| メタン | 土壌、堆肥、嫌気発酵、バイオガス |
| 揮発性有機化合物 | 香気、ストレス応答、劣化・腐敗に伴う変化 |
複数の圃場やハウスを巡回して比較する場合は、ガスバッグやシリンジで採取するスポット測定が使いやすい方法です。日内変動、換気設備の運転、収穫物の搬入後などの変化を追う場合は、自動サンプリングや連続測定が適しています。
ビニールハウスや貯蔵庫では、給気口、排気口、作物群落内、通路、上下方向で濃度が異なる場合があります。測定点を固定し、温湿度・換気・作業の記録と時刻を合わせると、ガス変化の原因を検討しやすくなります。
ビニールハウスは昼夜の温度差が大きく、高湿度になりやすい環境です。装置の動作温度・湿度範囲を確認し、直射日光、雨水、土ぼこり、農薬散布の影響を避けられる場所へ設置します。冷えた試料ガスを配管で送るときは、結露にも注意します。
農地では商用電源が近くにない場合があります。AC100V、DC電源、バッテリーのどれで動作するか、消費電力、連続運転時間を確認します。外部ボンベが必要なGCでは、運搬、固定、残量管理、安全な保管場所も必要です。
圃場で採取したガスを分析室へ運ぶ場合、容器への吸着・透過や保管温度により濃度が変わる可能性があります。採取から測定までの時間を決め、容器材質と保存方法を事前に評価します。装置を現場へ持ち込める場合は、移送時間を短縮できます。
日常測定を栽培担当者が行う場合は、採取量、校正、測定開始、結果確認、異常時の対応を手順書にまとめます。装置の遠隔確認、CSV出力、自動校正、消耗品の交換周期も選定時の確認項目です。
主要メーカーの製品を幅広く比較調査したうえで、選定基準を診断チャートに落とし込みました。いくつかの質問に答えるだけで、自社に合った製品にたどり着けます。
※2025年4月6日時点、Googleで「ガスクロマトグラフ メーカー」検索し公式HPが確認できた18社を対象に、各社最大2製品(複数製品の掲載がない場合は1製品)を調査。
当メディアのメーカー紹介ページに掲載している製品のうち、メーカー公式HPで現行製品として確認でき、農業・食品分野の用途が示されている製品を調査しました。その中から、特定の微量ガス測定、測定場所へ持ち込む連続分析、栽培室のガス測定・制御という異なる導入目的に合わせて3製品・システムを選定しています。
SGCシリーズは、エチレン、アセトアルデヒド、水素など、機種ごとに特定の微量ガスを測定するセンサーGCです。公式HPでは、果実・野菜の熟成評価、鮮度評価、腐敗研究、倉庫管理が用途例として示されています。
| 主な農業用途 | 植物ホルモン、食品鮮度、保存、倉庫管理 |
|---|---|
| 測定対象の例 | エチレン、アセトアルデヒド、水素 |
| 測定時間 | 2~8分(ガス種による) |
| キャリアガス | 自然大気 |
| 電源 | AC100V、40W |
| サイズ・重量 | 260×340×135mm、6.2kg(機種により異なる) |
Sylphは、ガスを直接吸引して連続分析できる重量1.9kgの超小型GCです。公式HPでは、農林水産分野、生鮮食品や食用油の鮮度・劣化の早期検出が用途例として示されています。
| 主な農業用途例 | 農林水産、生鮮食品の鮮度・劣化 |
|---|---|
| 試料導入 | ポンプによる直接吸引、内蔵濃縮器 |
| 検出器 | ボールSAWセンサ |
| 電源 | DC24V(ACアダプター付属) |
| サイズ・重量 | 133×174×88mm、1.9kg |
| 動作環境 | 10~40℃、結露しないこと |
野菜育成システムは、複数の栽培室に含まれるエチレン、二酸化炭素、酸素などをGCで常時測定し、設定した栽培データに基づいてガス供給や換気を行うシステムです。制御部、分析部、前処理部、供給部で構成され、詳細仕様は打ち合わせで決定します。
| 主な用途 | 工場作物栽培におけるガス濃度の測定・調整 |
|---|---|
| 測定成分の例 | エチレン、二酸化炭素、酸素 |
| 測定 | ガスクロマトグラフによる常時測定 |
| 制御 | ガス供給、換気 |
| 測定地点 | 1システムで複数の栽培室に対応可能 |
| 構成 | 制御部、分析部、前処理部、供給部 |
試験的に複数地点を調査する段階では、可搬型装置や採取バッグを用いた測定が進めやすい方法です。特定成分を日常的に測るなら、専用機と自動サンプリングを検討します。測定値に基づいて換気やガス供給まで自動化する場合は、GC本体ではなく制御設備を含むシステム設計が必要です。
導入前に1作期を通した試験測定を行い、ガスデータと収量・品質の関係を確認すると、必要な測定点と測定周期を絞り込みやすくなります。
ガスクロマトグラフは、使用シーンによって適した機器が大きく異なります。
使用する環境が違えば必要な検出器・設置条件・運用方法も変わるため、自社に合った製品を選ぶには「どこで・何を測定したいか」を起点に検討することが大切です。
当メディアは「現場での連続計測」「ラボでの成分特定」「製造ラインへの組み込み」の3つの使用シーン別におすすめメーカー・製品をまとめています。
ガスクロマトグラフの使用シーンは「現場での連続計測」「ラボでの成分特定」「製造ラインへの組み込み」の3つに大きく分かれます。
それぞれ設置条件・必要な精度・運用方法が根本的に異なります。このページでは使用環境ごとに適した装置と選定ポイントを分けて解説します。
引用元:ボールウェーブ公式HP
(https://www.ballwave.jp/products/)
| 対応ガス・成分 | VOC・残留溶媒・香気成分 |
|---|---|
| 重量 | 1.9kg |
| サイズ | 133×88×174mm |
引用元:アジレント・テクノロジー公式HP
(https://www.chem-agilent.com/contents.php?id=1005473)
| 対応ガス・成分 | 硫黄化合物・窒素化合物・VOC・残留溶媒・香気成分 |
|---|---|
| 重量 | 公式HPに記載なし |
| サイズ | 580×510×490mm |
引用元:横河電機公式HP
(https://www.yokogawa.co.jp/solutions/products-and-services/measurement/analyzers/gas-analyzers/process-gas-chromatographs/process-gas-chromatograph-gc8000/#詳細)
| 対応ガス・成分 | 天然ガス・石油精製・石油化学 |
|---|---|
| 重量 | 約100~200kg |
| サイズ | 公式HPに記載なし |
※2026年4月6日時点、Googleで「ガスクロマトグラフ メーカー」検索し公式HPが確認できた18社を対象に、各社最大2製品(複数製品の掲載がない場合は1製品)を調査。
再現性の記載があった製品の中での比較。