土壌汚染調査では、土地の利用履歴や使用物質を調べたうえで、土壌ガス、土壌、地下水などを採取して分析します。ガスクロマトグラフ(GC)やGC-MSは、主に揮発性有機化合物(VOC)の分離・定量に用いられます。
現場で測定する目的と、公定法に基づいて汚染状態を判定する目的を分けることが、装置と調査手順を選ぶうえで重要です。
土壌汚染は、過去の事業活動、原料・薬品の保管、配管、排水経路、事故などと関係します。最初に土地利用履歴、使用・保管した化学物質、施設配置を確認し、調査対象物質と採取地点を設定します。
GCが使われる代表例は、四塩化炭素、ジクロロメタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ベンゼンなどのVOCです。重金属や無機化合物など、揮発しない物質には別の分析法を用います。
対象成分と前処理・検出器の組み合わせは、VOC分析の方法と装置選定で確認できます。
土壌中のVOCは気相へ移動するため、地中から土壌ガスを採取してGCまたはGC-MSで測定できます。汚染の平面分布を把握する初期段階で利用しやすい方法です。
土壌そのものの状態や溶出量を評価する場合は、規定された方法で土壌を採取・調製し、溶出液や抽出液を分析します。地下水まで移行している可能性がある場合は、地下水試料も調べます。どの媒体を測るかは、調査段階と法令・仕様書に基づいて決めます。
土壌ガス調査の公定法では、GC-PID、GC-FID、GC-ECD、GC-ELCD、GC-MSが分析方法として示されています。検出器ごとに応答する成分が異なるため、対象物質を測定できる構成かを確認します。
GC-MSは質量スペクトルを利用して成分を確認しやすく、多成分の分析に向きます。一方、対象物質が限定されるルーチン測定では、専用検出器を搭載したGCが候補になります。いずれの場合も、規定された定量下限と精度を実試料で満たせることが必要です。
Sylphのような小型・ポータブル型GCは、現場での即時分析や設置場所を選ばない柔軟性など、従来のラボ設置型GCにはないメリットを多く備えています。一方で導入にあたっては、重量やサイズ、バッテリー駆動の可否など、現場環境に合わせて確認しておきたいポイントも少なくありません。
こうした導入前に押さえておきたい観点を整理しているので、ぜひ参考にしてください。
地表から採取孔を設け、土壌ガスを減圧捕集瓶、捕集バッグ、捕集濃縮管などへ採取します。配管や容器は、対象物質を吸着・透過させにくく、試料を汚染しない材質を選びます。導管はできるだけ短くし、漏れや外気の混入を確認します。
採取したガスは、一定量をGCへ直接導入する方法と、捕集管へ濃縮して熱脱着する方法があります。現場以外で分析する場合は、運搬・保管による濃度低下を評価しなければなりません。
浄化工事では、土壌ガス吸引、掘削除去、原位置分解などの前後でVOCを測定し、濃度分布の変化を確認します。現場で短時間に結果を得られれば、追加採取や掘削範囲をその日の作業計画へ反映しやすくなります。
ただし、現場測定値だけで法的な適合・不適合を確定できるとは限りません。測定目的、使用した方法、校正、検出下限、試料採取条件を記録し、必要な確認分析へつなげます。
VOCは土壌間隙を移動し、地下水や建物内空気へ影響する場合があります。土壌ガスだけでなく、地下水位、地質、建物の位置、換気条件なども踏まえて調査計画を立てます。単一地点の濃度だけではなく、地点・深度・時間の違いを比較することが大切です。
ポータブルGCやポータブルGC-MSを現場へ持ち込むと、採取後すぐにクロマトグラムを確認できます。多数の候補地点から濃度の高い場所を探す、浄化工事中に濃度変化を見る、試料を分析室へ送る優先順位を付けるといった用途があります。
携帯性を比較する際は、小型・ポータブルGCの選定条件を参照し、重量だけでなく電源やガス供給、設置環境を含めて検討します。
携帯型PIDは、VOCに応答する総量計として短時間の確認に役立ちますが、混合ガス中の成分をカラムで分離しません。GC-PIDは、GCカラムで成分を分離してからPIDで検出するため、保持時間を用いて成分ごとの濃度を評価できます。
未知物質が混在する可能性がある場合や、保持時間だけでは識別が難しい場合は、GC-MSによる確認が有効です。現場機器の表示値をそのまま確定値とせず、標準物質、分析条件、妨害成分を確認します。
| 装置 | 主な役割 | 注意点 |
|---|---|---|
| 携帯型PID | VOCの有無や濃度変化を素早く確認 | 混合成分を分離しない |
| ポータブルGC-PID | 既知VOCを分離して現場で定量 | 対象成分、分離条件、ランプエネルギーを確認 |
| ポータブルGC-MS | 現場で分離し、質量スペクトルで成分を確認 | 重量、電源、キャリアガス、校正、保守を確認 |
| 据え置きGC・GC-MS | 管理された環境で公定法や確認分析を実施 | 運搬・保管による試料変化を管理 |
環境省の土壌ガス調査方法では、精度を確保できる環境であれば、室内、車内、野外のいずれでも分析できるとされています。一方で、対象物質を定量でき、規定された定量下限付近で必要な変動係数を満たす装置・方法であることが条件です。
主要メーカーの製品を幅広く比較調査したうえで、選定基準を診断チャートに落とし込みました。いくつかの質問に答えるだけで、自社に合った製品にたどり着けます。
※2025年4月6日時点、Googleで「ガスクロマトグラフ メーカー」検索し公式HPが確認できた18社を対象に、各社最大2製品(複数製品の掲載がない場合は1製品)を調査。
土壌調査向け装置は、現場での一次判定、現場での成分確認、分析室での公定法・確認分析という役割に分けて比較します。メーカー公式HPで2026年9月4日時点に現行製品として確認できる装置から、可搬型GC-MS、軽量なGC-PID、検出器を選べる据え置きGCの3製品を選定しました。
HAPSITE ERは、現場でVOCや一部の半揮発性有機化合物を分離・検出する可搬型GC-MSです。バッテリー駆動と窒素キャリアガスに対応し、採取地点でクロマトグラムと質量スペクトルを確認する運用を検討できます。
| 装置区分 | ポータブルGC-MS |
|---|---|
| 主な対象 | VOC、一部のSVOC |
| 質量範囲 | m/z 41~300(SIMではm/z 1~300) |
| キャリアガス | 窒素 |
| 電源 | 充電式バッテリーまたはAC電源 |
| 重量 | 19kg(バッテリーを含む) |
FROG-5000は、PIDを搭載したポータブルGCです。公式HPでは、空気、水、土壌試料中のVOC分析が用途として示されています。内蔵バッテリーで動作し、現場で既知VOCの濃度を短時間に確認する用途が候補になります。
| 装置区分 | ポータブルGC-PID |
|---|---|
| 主な対象 | 空気、水、土壌試料中のVOC |
| PIDランプ | 10.6eV |
| カラム長 | 5.2m |
| 電源 | リチウムイオンバッテリー、外部電源 |
| 重量 | 4.8lb(約2.2kg) |
GC7100は、FID、TCD、NPD、FPD、非放射線源式ECDから検出器を選べる据え置き型GCです。ガスサンプラやヘッドスペースサンプラにも対応し、対象VOCと試料形態に合わせた分析系を構成できます。
| 装置区分 | 据え置き型の汎用GC |
|---|---|
| 検出器 | FID、TCD、NPD、FPD、非放射線源式ECD |
| 試料導入 | ガスサンプラ、液体オートサンプラ、ヘッドスペースサンプラに対応 |
| カラム槽 | 室温+10~400℃ |
| サイズ・重量 | 495×430×500mm、約40kg |
ポータブル機を選ぶ場合は、実際の土壌ガスや抽出試料を用い、妨害成分を含む条件で分離と定量下限を確認します。測定時間だけでなく、校正頻度、標準ガス、バッテリー、キャリアガス、温湿度範囲、除染方法も比較します。
現場でも標準ガスによる応答確認が必要です。GCのキャリブレーションと検量線の更新を踏まえ、校正・確認分析の手順を調査計画に組み込みます。
据え置き型は、前処理装置、検出器、試料数、データ管理、保守体制を含めて評価します。現場機で採取地点を絞り、必要な試料を管理された分析系で確認するという役割分担を決めると、調査全体を組み立てやすくなります。
ガスクロマトグラフは、使用シーンによって適した機器が大きく異なります。
使用する環境が違えば必要な検出器・設置条件・運用方法も変わるため、自社に合った製品を選ぶには「どこで・何を測定したいか」を起点に検討することが大切です。
当メディアは「現場での連続計測」「ラボでの成分特定」「製造ラインへの組み込み」の3つの使用シーン別におすすめメーカー・製品をまとめています。
ガスクロマトグラフの使用シーンは「現場での連続計測」「ラボでの成分特定」「製造ラインへの組み込み」の3つに大きく分かれます。
それぞれ設置条件・必要な精度・運用方法が根本的に異なります。このページでは使用環境ごとに適した装置と選定ポイントを分けて解説します。
引用元:ボールウェーブ公式HP
(https://www.ballwave.jp/products/)
| 対応ガス・成分 | VOC・残留溶媒・香気成分 |
|---|---|
| 重量 | 1.9kg |
| サイズ | 133×88×174mm |
引用元:アジレント・テクノロジー公式HP
(https://www.chem-agilent.com/contents.php?id=1005473)
| 対応ガス・成分 | 硫黄化合物・窒素化合物・VOC・残留溶媒・香気成分 |
|---|---|
| 重量 | 公式HPに記載なし |
| サイズ | 580×510×490mm |
引用元:横河電機公式HP
(https://www.yokogawa.co.jp/solutions/products-and-services/measurement/analyzers/gas-analyzers/process-gas-chromatographs/process-gas-chromatograph-gc8000/#詳細)
| 対応ガス・成分 | 天然ガス・石油精製・石油化学 |
|---|---|
| 重量 | 約100~200kg |
| サイズ | 公式HPに記載なし |
※2026年4月6日時点、Googleで「ガスクロマトグラフ メーカー」検索し公式HPが確認できた18社を対象に、各社最大2製品(複数製品の掲載がない場合は1製品)を調査。
再現性の記載があった製品の中での比較。