ガスクロマトグラフ(GC)と液体クロマトグラフ(LC)は、どちらも混合物を成分ごとに分離し、定性・定量する装置です。大きな違いは、カラム内で試料を運ぶ移動相と、測定しやすい物質の性質にあります。
揮発性と熱安定性がある成分はGC、気化しにくい成分や熱に弱い成分はLCを起点に検討すると、分析法を絞り込みやすくなります。
GCでは、ヘリウム、水素、窒素などのキャリアガスが、気化した試料成分をカラムへ運びます。カラム恒温槽で温度を制御し、揮発性や固定相との相互作用の違いを利用して成分を分離します。
LCでは、水や有機溶媒を組み合わせた液体の移動相をポンプで送り、溶液中の成分をカラムへ運びます。固定相と移動相に対する相互作用の違いによって、各成分の溶出時間が変わります。高速液体クロマトグラフはHPLC、より高圧・高速な装置はUHPLCと呼ばれます。
GCでは、試料導入時やカラム内で成分を気体として扱います。そのため、測定温度で気化し、加熱しても分解・反応しにくい成分が向いています。溶剤、香気成分、炭化水素、脂肪酸メチルエステルなどが代表例です。
LCは、移動相へ溶解できる成分を対象とします。医薬品成分、代謝物、ペプチド、糖、有機酸、色素など、難揮発性、極性が高い、熱に弱い成分を測定しやすい方法です。
GCではFID、TCD、ECD、FPD、MSなどを使います。LCではUV/可視吸光、PDA、蛍光、示差屈折率、蒸発光散乱、質量分析計などが使われます。同じ分離装置でも、検出器が対象成分へ応答しなければ測定できません。
GCの各検出器の応答と対象成分は、検出器の種類と選択性で確認できます。
| 比較項目 | GC | LC(HPLC・UHPLC) |
|---|---|---|
| 移動相 | ヘリウム、水素、窒素などの気体 | 水、有機溶媒、緩衝液などの液体 |
| 主な測定対象 | 揮発性があり、測定温度で安定な成分 | 移動相に溶解する難揮発性・熱不安定な成分 |
| 分離へ強く影響する条件 | カラム、温度、キャリアガス流量 | カラム、溶媒組成、pH、流量、温度 |
| 試料導入 | 気体、または注入口で気化できる液体 | 移動相と適合する溶液 |
| 代表的な検出器 | FID、TCD、ECD、FPD、MS | UV、PDA、FLD、RI、ELSD、MS |
| 主な運用負担 | キャリアガス、注入口消耗品、カラム管理 | 移動相調製、溶媒購入、脱気、廃液処理 |
Sylphのような小型・ポータブル型GCは、現場での即時分析や設置場所を選ばない柔軟性など、従来のラボ設置型GCにはないメリットを多く備えています。一方で導入にあたっては、重量やサイズ、バッテリー駆動の可否など、現場環境に合わせて確認しておきたいポイントも少なくありません。
こうした導入前に押さえておきたい観点を整理しているので、ぜひ参考にしてください。
GCに向くかを判断するときは、沸点や蒸気圧だけでなく、注入口温度とカラム温度で分解・吸着・反応しないかを確認します。気化しやすくても、熱分解によって元の成分を再現よく測れなければ、通常のGC分析には向きません。
高沸点成分では、注入口やカラムへ残留し、ピークのテーリングやキャリーオーバーを起こすことがあります。LCでは気化が不要ですが、試料が移動相へ溶けるか、析出しないか、カラムへ強く残留しないかを確認します。
有機酸、糖、アミノ酸などの極性化合物は、そのままではGCで測りにくい場合があります。官能基を化学的に変えて揮発性や熱安定性を高める誘導体化を行えば、GCで分析できることがあります。
誘導体化は選択肢を広げる一方、反応時間、試薬由来のピーク、反応率、水分の影響を管理する必要があります。前処理の再現性を含めて、LCによる直接分析と比較します。
誘導体化が選択の分岐点になる具体例として、アミノ酸のGC分析と前処理を参照してください。
対象成分だけでなく、試料に含まれる水、油、塩、タンパク質、樹脂、添加剤も分析法へ影響します。GCではヘッドスペース、熱脱着、パージ・トラップ、固相マイクロ抽出を使い、揮発成分を選択的に導入できます。
LCでは、ろ過、希釈、除タンパク、固相抽出などでカラムや検出器への負荷を抑えます。分析法を決める前に、目的成分の濃度と妨害成分の量を見積もることが大切です。
| 物質・試料の特徴 | 起点にする方法 | 確認すること |
|---|---|---|
| 揮発性が高く、加熱しても安定 | GC | カラム、注入口、検出器、必要な前処理 |
| 難揮発性、極性が高い、熱に弱い | LC | 溶解性、pH、カラム、検出器 |
| 極性が高いが誘導体化できる | GCとLCを比較 | 前処理時間、再現性、感度、妨害 |
| 未知成分を調べたい | GC-MSまたはLC-MS | イオン化法、ライブラリ、精密質量、試料適合性 |
GCのキャリアガスには、高純度のヘリウム、水素、窒素などを使います。選択は検出器、カラム、分析速度、感度、安全設備、供給安定性によって決まります。ガスボンベ、配管、減圧器、精製フィルター、漏れ検査も装置運用の一部です。
装置内蔵のガス供給や精製空気も選択肢ですが、ガスそのものは必要です。外部ボンベ接続が不要な方式で補充・電源・保守条件を比較できます。
水素を使う場合は、高速分析や供給面の利点がある一方、可燃性ガスとして換気、漏れ検知、停止時の制御を確認します。既存メソッドのキャリアガスを変更すると保持時間や分離が変わるため、分析法の再検証が必要です。
LCでは、水、アセトニトリル、メタノール、緩衝液などを移動相として使用します。分析中に組成を一定にするイソクラティック溶離と、時間とともに組成を変えるグラジエント溶離があります。
溶媒組成、pH、添加剤は保持とピーク形状へ影響します。移動相はろ過・脱気し、ポンプやカラムの耐圧、検出器との適合性を確認します。LC-MSでは、不揮発性の塩がイオン源を汚染するため、揮発性の添加剤を使うなどの配慮が必要です。
GCでは、セプタム、ライナー、フェラル、カラム、ガス精製フィルターなどを交換します。LCでは、移動相溶媒、フィルター、シール、配管、ガードカラム、分析カラムなどが必要です。
GCはガス使用量とボンベ交換、LCは溶媒購入量と廃液処理が運用費へ影響します。装置価格だけでなく、1検体当たりの消耗品、前処理、分析時間、廃棄費用を含めて比較します。
GCの費用を積算するときは、ガス・消耗品・保守の年間費用の算出方法を利用し、LCも同じ検体数と使用期間で比べます。
主要メーカーの製品を幅広く比較調査したうえで、選定基準を診断チャートに落とし込みました。いくつかの質問に答えるだけで、自社に合った製品にたどり着けます。
※2025年4月6日時点、Googleで「ガスクロマトグラフ メーカー」検索し公式HPが確認できた18社を対象に、各社最大2製品(複数製品の掲載がない場合は1製品)を調査。
装置選定では、対象成分名、予想濃度、必要な定量下限、試料数、測定時間、準拠する公定法・規格を一覧にします。未知成分の探索か、既知成分のルーチン定量かによっても必要な検出器が変わります。
次に、前処理を含む1検体当たりの作業時間、オートサンプラーの必要本数、夜間運転、データ管理、装置停止時の対応を整理します。GCとLCのどちらか一方へ無理に統一せず、対象成分群ごとに分析法を分ける選択肢も検討します。
| 確認順 | 質問 | 判断の目安 |
|---|---|---|
| 1 | 成分は測定温度で気化し、安定か | はい:GCを検討/いいえ:LCを検討 |
| 2 | 試料や前処理溶液へ安定して溶けるか | 溶解性と析出、吸着を確認 |
| 3 | 必要な定量下限を満たす検出器は何か | GC-MS、LC-MSを含めて比較 |
| 4 | 公定法・規格で方法が指定されているか | 指定条件を優先 |
| 5 | 前処理、測定、保守を継続できるか | 実試料デモと総保有コストで確認 |
Nexis GC-2060は、MMI(マルチモード注入ユニット)やFID、TCDなどを組み合わせられる据え置き型GCです。揮発性があり、熱に安定した既知成分のルーチン分析を構成する際の製品例です。
| 装置区分 | 据え置き型GC |
|---|---|
| 主な選定対象 | 揮発性・熱安定性がある成分 |
| 注入口・検出器 | 分析目的に応じて構成 |
| 導入時の確認 | カラム、検出器、キャリアガス、試料導入、分析法移管 |
1260 Infinity III LCシステムは、ポンプ、オートサンプラー、カラム恒温槽、検出器などを組み合わせるLCです。難揮発性や熱に弱い成分を、目的に合うカラムと検出器でルーチン分析する際の製品例です。
| 装置区分 | HPLC/UHPLCシステム |
|---|---|
| 主な選定対象 | 移動相に溶解する難揮発性・熱不安定な成分 |
| システム構成 | ポンプ、オートサンプラー、カラム恒温槽、検出器など |
| 導入時の確認 | 耐圧、溶媒、カラム、検出器、試料前処理、廃液 |
カタログ仕様だけでは、試料マトリックスの影響や前処理時間を評価できません。候補装置で実試料を測定し、分離、感度、再現性、キャリーオーバー、解析時間を比較します。
保守契約、消耗品、ガス・溶媒、廃液、ソフトウェア、担当者教育まで含めて費用を見積もります。測定対象の性質、公定法、検出器、運用負担の順で判断すると、GCとLCの選択理由を社内で説明しやすくなります。
ガスクロマトグラフは、使用シーンによって適した機器が大きく異なります。
使用する環境が違えば必要な検出器・設置条件・運用方法も変わるため、自社に合った製品を選ぶには「どこで・何を測定したいか」を起点に検討することが大切です。
当メディアは「現場での連続計測」「ラボでの成分特定」「製造ラインへの組み込み」の3つの使用シーン別におすすめメーカー・製品をまとめています。
ガスクロマトグラフの使用シーンは「現場での連続計測」「ラボでの成分特定」「製造ラインへの組み込み」の3つに大きく分かれます。
それぞれ設置条件・必要な精度・運用方法が根本的に異なります。このページでは使用環境ごとに適した装置と選定ポイントを分けて解説します。
引用元:ボールウェーブ公式HP
(https://www.ballwave.jp/products/)
| 対応ガス・成分 | VOC・残留溶媒・香気成分 |
|---|---|
| 重量 | 1.9kg |
| サイズ | 133×88×174mm |
引用元:アジレント・テクノロジー公式HP
(https://www.chem-agilent.com/contents.php?id=1005473)
| 対応ガス・成分 | 硫黄化合物・窒素化合物・VOC・残留溶媒・香気成分 |
|---|---|
| 重量 | 公式HPに記載なし |
| サイズ | 580×510×490mm |
引用元:横河電機公式HP
(https://www.yokogawa.co.jp/solutions/products-and-services/measurement/analyzers/gas-analyzers/process-gas-chromatographs/process-gas-chromatograph-gc8000/#詳細)
| 対応ガス・成分 | 天然ガス・石油精製・石油化学 |
|---|---|
| 重量 | 約100~200kg |
| サイズ | 公式HPに記載なし |
※2026年4月6日時点、Googleで「ガスクロマトグラフ メーカー」検索し公式HPが確認できた18社を対象に、各社最大2製品(複数製品の掲載がない場合は1製品)を調査。
再現性の記載があった製品の中での比較。