エチレンは、果実や野菜の成熟・老化に関わる植物ホルモンです。青果物が放出するエチレンガスの濃度や時間変化を測定すると、追熟の進み方や貯蔵環境の状態を判断する手掛かりになります。
ガスクロマトグラフは、混合ガスからエチレンを分離して測定できるため、品種別の鮮度評価、貯蔵条件の検討、倉庫内の環境管理などに活用されています。本ページでは、エチレンガスの分析手法と、農業・流通現場へ装置を導入する際のポイントを解説します。
エチレン生成量を調べる場合は、青果物を一定容積の容器に入れ、所定時間後に容器内のガスを採取します。貯蔵庫や包装内の環境を評価する場合は、測定地点の空気をガスバッグやシリンジに採取する方法のほか、サンプリング配管を通して装置へ送る方法があります。
濃度は、容器の容積、青果物の重量、密閉時間、温度の影響を受けます。品種や保存条件を比較するには、試料量と採取時間、温度、採取位置をそろえることが重要です。
採取したガスをガスクロマトグラフへ導入すると、試料中の成分がカラム内で分離されます。エチレンの分析には、水素炎イオン化検出器(FID)や半導体式ガスセンサーなどが用いられます。濃度を求める際は、濃度が分かっている標準ガスで検量線を作成し、試料のピーク面積またはピーク高さと比較します。
必要な測定下限は、青果物の種類や測定目的によって異なります。微量の変化を追う場合は、装置の検出下限だけでなく、サンプリング量や濃縮の要否も確認します。
エチレン濃度だけで鮮度を一律に判定できるわけではありません。エチレンへの感受性や、成熟時にエチレン生成が増えるタイミングは品目によって異なります。硬度、糖度、色、重量減少、官能評価、温湿度などのデータと組み合わせることで、追熟や劣化の状態を評価しやすくなります。
Sylphのような小型・ポータブル型GCは、現場での即時分析や設置場所を選ばない柔軟性など、従来のラボ設置型GCにはないメリットを多く備えています。一方で導入にあたっては、重量やサイズ、バッテリー駆動の可否など、現場環境に合わせて確認しておきたいポイントも少なくありません。
こうした導入前に押さえておきたい観点を整理しているので、ぜひ参考にしてください。
バナナ、キウイフルーツ、リンゴなど、収穫後も追熟が進む青果物では、エチレン生成の推移が成熟状態を把握する指標になります。温度や処理条件を変えた試験区を比較し、出荷時期や食べ頃に合わせた追熟条件を検討する際に活用できます。
エチレンは、同じ空間に保管された青果物の成熟や老化に影響を与える場合があります。低温貯蔵庫、CA貯蔵庫、輸送コンテナなどで濃度を測定すると、換気やエチレン除去設備の運転状態を確認する材料になります。
ただし、鮮度保持では温度、水分、酸素・二酸化炭素濃度、振動・衝撃も品質に関わります。エチレン測定は、温湿度管理や外観検査を置き換えるものではなく、貯蔵環境を多面的に評価する手段の一つです。
エチレン吸着剤・分解剤、鮮度保持包装、1-MCP処理などの効果を検討する試験でも、ガス濃度の測定が利用されます。処理前後を同じ条件で測定し、品質データと照合することで、対象品目や保存期間に合う方法を検討できます。
貯蔵庫やビニールハウスでは、換気口、出入口、荷姿、気流、青果物の配置によってガス濃度が均一にならないことがあります。1地点の測定値だけでは、局所的な滞留や換気不足を捉えられない場合があります。
庫内の上部・中央・下部、給気側・排気側、荷の近くなどに測定点を設定すると、濃度分布を確認できます。測定点は施設の広さだけで決めず、気流と青果物の配置、管理したい設備を基準に選びます。
ガス濃度は、収穫物の搬入量、扉の開閉、換気設備の運転、昼夜の温度変化などに応じて変動します。一定間隔で連続測定し、作業記録や温湿度データと時刻を合わせると、濃度が上昇した原因を絞り込みやすくなります。
手作業のスポット測定は複数地点を柔軟に確認できる一方、夜間や無人時間帯の変化を捉えにくい方法です。常時監視が必要な場合は、自動サンプリングや複数流路の切り替え、測定値の保存・外部出力に対応する構成を検討します。
1台の装置へ複数地点のガスを順番に送る方式では、装置台数を抑えられます。ただし、配管が長いと測定地点から装置までの移送に時間がかかり、配管内への吸着や前の試料の残留も起こり得ます。配管材質、長さ、流量、パージ時間を含めて測定周期を設計する必要があります。
主要メーカーの製品を幅広く比較調査したうえで、選定基準を診断チャートに落とし込みました。いくつかの質問に答えるだけで、自社に合った製品にたどり着けます。
※2025年4月6日時点、Googleで「ガスクロマトグラフ メーカー」検索し公式HPが確認できた18社を対象に、各社最大2製品(複数製品の掲載がない場合は1製品)を調査。
装置によって、AC100V、DC電源、バッテリーなど、必要な電源が異なります。ビニールハウスや仮設の測定場所では、電源容量とコンセント位置を事前に確認します。発電機を使う場合は、電圧変動や排ガスが測定へ与える影響にも注意が必要です。
一般的なGCでは、ヘリウム、水素、窒素などのキャリアガスを外部から供給します。高圧ガスボンベを設置しにくい現場では、自然大気を利用する製品、ガス源を内蔵する製品、発生器と接続できる製品が候補になります。
農業施設では、分析室より温湿度の変化が大きく、土ぼこりや薬剤、水分の影響も受けやすくなります。装置の動作温度・湿度範囲を確認し、直射日光や雨水を避けられる設置場所を確保します。
低温の貯蔵庫から採取したガスを暖かい場所へ送る場合や、湿度の高い空気を扱う場合は、配管内の結露が測定に影響する可能性があります。必要に応じて、除湿、配管の保温、フィルターの設置を検討します。
濃度を定量するには、対象濃度に合った標準ガスを用意し、定期的に装置の応答を確認します。測定担当者が変わっても結果を比較できるよう、採取量、測定間隔、校正頻度、異常値が出た場合の再測定手順を標準化しておきましょう。
当メディアのメーカー紹介ページに掲載している製品のうち、メーカー公式HPで現行製品として確認でき、農業・食品分野での活用例、または現場近くで運用しやすい仕様を持つ製品を調査しました。その中から、エチレンの専用測定、持ち込みによる連続分析、現場近くの分析室での多成分測定という異なる導入目的に合わせて3製品を選定しています。
SGCシリーズは、特定の微量ガスを測定するセンサーガスクロマトグラフです。エチレンを標準測定対象とする「SGEA-P3-C1」「SGEA-P3-C2」が用意されています。自然大気をキャリアガスとして使うため、高圧ガスボンベを設置せずに運用できます。
| エチレン測定 | 標準対応機種あり |
|---|---|
| 測定濃度域 | 5~10,000ppbまたは50~10,000ppb(機種による) |
| キャリアガス | 自然大気 |
| 電源 | AC100V、40W |
| サイズ | 260×340×135mm(幅×奥行×高さ、機種により異なる) |
| 重量 | 6.2kg(機種により異なる) |
| 連続測定 | オプションで対応 |
Sylphは、本体重量1.9kgの超小型ガスクロマトグラフです。ガスをポンプで直接吸引し、内蔵濃縮器、カラム、ボールSAWセンサを使って連続分析します。公式HPでは、生鮮食品や食用油の鮮度・劣化の早期検出、農林水産分野での活用が用途例として示されています。
| 主な用途例 | 生鮮食品・食用油の鮮度や劣化の早期検出 |
|---|---|
| 検出器 | ボールSAWセンサ |
| キャリアガス | 水素キャニスター |
| 電源 | DC24V(ACアダプター付属) |
| サイズ | 133×174×88mm(幅×奥行×高さ、突起部を除く) |
| 重量 | 1.9kg |
| キャリアガス使用時間の目安 | 100時間 |
GC7100は、小型の汎用ガスクロマトグラフです。FIDとTCDの同時搭載に対応し、NPD、FPD、非放射線源式ECDも選択できます。持ち歩く用途より、選果場や研究施設に測定スペースを設け、エチレン以外の成分も含めて分析条件を構築したい場合に向いています。
| 対応検出器 | FID、TCD、NPD、FPD、非放射線源式ECD |
|---|---|
| カラム | パックドカラム、キャピラリーカラム、ワイドボアカラム |
| 試料導入 | ガスサンプラー、液体オートサンプラー、ヘッドスペースサンプラーに対応可能 |
| 電源 | AC100V、50/60Hz、1.5kVA |
| サイズ | 495×500×430mm(幅×奥行×高さ) |
| 重量 | 約40kg |
| キャリアガス | 外部供給 |
エチレン濃度だけを短時間で繰り返し測るなら、エチレン専用機種が選択肢になります。測定地点を移動しながらガスの変化を追う場合は、重量、電源、ガス供給方式、立ち上げ時間を確認します。エチレン以外の香気・異臭成分も分析する場合は、汎用GCやGC-MSを含め、必要な検出器と前処理を検討します。
候補機を絞った後は、実際の青果物や貯蔵庫のガスを用いたデモ測定を依頼し、必要な濃度域を測れるか確認することが重要です。測定性能だけでなく、採取から結果確認までの時間、校正作業、消耗品、現場担当者の操作手順まで比較しましょう。
ガスクロマトグラフは、使用シーンによって適した機器が大きく異なります。
使用する環境が違えば必要な検出器・設置条件・運用方法も変わるため、自社に合った製品を選ぶには「どこで・何を測定したいか」を起点に検討することが大切です。
当メディアは「現場での連続計測」「ラボでの成分特定」「製造ラインへの組み込み」の3つの使用シーン別におすすめメーカー・製品をまとめています。
ガスクロマトグラフの使用シーンは「現場での連続計測」「ラボでの成分特定」「製造ラインへの組み込み」の3つに大きく分かれます。
それぞれ設置条件・必要な精度・運用方法が根本的に異なります。このページでは使用環境ごとに適した装置と選定ポイントを分けて解説します。
引用元:ボールウェーブ公式HP
(https://www.ballwave.jp/products/)
| 対応ガス・成分 | VOC・残留溶媒・香気成分 |
|---|---|
| 重量 | 1.9kg |
| サイズ | 133×88×174mm |
引用元:アジレント・テクノロジー公式HP
(https://www.chem-agilent.com/contents.php?id=1005473)
| 対応ガス・成分 | 硫黄化合物・窒素化合物・VOC・残留溶媒・香気成分 |
|---|---|
| 重量 | 公式HPに記載なし |
| サイズ | 580×510×490mm |
引用元:横河電機公式HP
(https://www.yokogawa.co.jp/solutions/products-and-services/measurement/analyzers/gas-analyzers/process-gas-chromatographs/process-gas-chromatograph-gc8000/#詳細)
| 対応ガス・成分 | 天然ガス・石油精製・石油化学 |
|---|---|
| 重量 | 約100~200kg |
| サイズ | 公式HPに記載なし |
※2026年4月6日時点、Googleで「ガスクロマトグラフ メーカー」検索し公式HPが確認できた18社を対象に、各社最大2製品(複数製品の掲載がない場合は1製品)を調査。
再現性の記載があった製品の中での比較。